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中小企業に立ちはだかるDXの壁(既存システムへの依存編)

2025-02-27
中小企業に立ちはだかるDXの壁(既存システムへの依存編)
クラウドよりFAXの方が安心
 井上電子では受発注をシステム化しようと試みており、クラウドによるDXに取り組んでいます。例えば部品の発注もFAXで行っているケースも多く、システムによる業務効率の改善と工数削減が目的です。社内システムの要件定義を進める中で、「発注はFAXでするのが安心です」と言う意見がありました。その理由は「FAXを送付しておけば、発注の証拠が残る」というもので、FAXしか受け付けない取引先もあり、長い間定着したシステムを急に変更することへの不安感もあるようでした。
 FAXは携帯電話が普及する前の1980年代には定着しており、各家庭にも当たり前に設置されていました。社会全体が紙文化で完結していた時代はFAXの利便性には合理性がありました。ただし一台のFAXの処理能力には限度があり、複数の人と場所での情報共有には不向きです。さらに文書をデータ化、保管するのには人手が必要で情報処理量にも限界があります。この状態だと大量のデータ処理を前提としたニーズに対応できず、新たなビジネスチャンスに対応できないリスクがあります。

FAXと携帯電話は日本企業の黄金時代を支えた
 FAXや携帯電話はその普及には日本企業が大きな役割を果たしたうえに、経済的にも日本が最も成功を収めた時代とも重なります。過去の成功体験と既存システムへの依存は表裏一体であり、多くの企業や社員にとって安心感のあるシステムです。しかし、インターネットやスマホがほぼ全世代に普及し、FAX利用率は年々低下しています。実態としてFAXを通信手段とする若者はほとんどいませんし、ガラケーを使い慣れたシニア世代へのスマホの普及は急速に進んでいます。ビジネス環境ではスピードと大量データ処理が求められるにもかかわらず、企業の実務ではアナログ手法が根強く残るというギャップが生まれています。スマホを持たない社員はいないのに、会社の通信手段がアナログというわけです。

既存システムへの依存と事業承継は表裏一体 
 既存システムへの依存は中小企業の課題である事業承継とも密接に関係しています。事業承継がうまく進んでいない場合、その企業が将来への展望を描けないということと同じですので、投資意欲もわきません。結果的に過去の成功モデルをベースにした既存システムへの依存が強まり、DXが進まない、という構造的な問題を抱えています。
 それではどうすればよいか?ポイントは「安く、簡単に導入、運用ができる」ことが重要になります。具体的には低コストのクラウドシステムと既存のシステムを併用した段階的なDXが必要になります。
次回は具体的に何をすれば良いのかを考えます。

中小企業に立ちはだかるDXの壁(ITリテラシー編)

2025-02-20
中小企業に立ちはだかるDXの壁(ITリテラシー編)
クラウドサービスの理解度と利用状況
 前回は、中小企業がDXを推進する上での「投資資金の制約」について述べました。しかし、投資資金が確保できたとしても、それだけでDXが進むわけではありません。もう一つの大きな課題がITに関する理解不足です。
中小企業基盤整備機構が2024年に実施した「中小企業のDX推進に関する調査」によれば、DX(デジタルトランスフォーメーション)を理解している(「理解している」「ある程度理解している」)と回答した企業は49.2%と、全体の約半数にとどまっています。(出典; 独立行政法人 中小企業基盤整備機構「中小企業のDX推進に関する調査」(2024))
 また、DXに取り組んでいる企業は全体の42.0%であり、依然として多くの企業がデジタル化の途上にあることが示されています。特に、クラウドサービスの活用状況については、「データの社内情報共有(オンラインストレージ)」が58.9%と最も多く、次いで「社内のスケジュール・タスク管理」「サーバーやネットワークなどを利用できるサービス」が共に56.3%となっています。
これらの結果から、多くの中小企業がクラウドサービスを一部の業務で活用しているものの、全体的な理解度や導入率は十分とは言えない状況が伺えます。

クラウド=ただの保存場所ではない
 クラウドは「データを保存する場所」ですが、同時にインターネットに接続しているので、いつでもどこからでもアクセスすることができます。例えば井上電子にも社内サーバーがありますが、外部からのアクセスでは電気図面の確認、修正、アップロードは可能ですが限界があります。社内サーバーは外部のインターネットから直接アクセスを想定しておらず、データ容量やインターネット環境などが充分ではないからです。
 一方でクラウドは、大量のデータ転送を前提としたインフラを持っているため、高速なアップロード・アップデートが可能です。電気図面の修正やソフト交換などもクラウド経由で顧客と直接やりとりできますし、内容も社内で共有されます。社内システムだとPC本体やUSBなどでデータを持ち出して現場で修正することになりますが、その内容は共有されないですし、情報の管理も個人まかせになってしまい、紛失、破損、流出のリスクも伴います。

DX(デジタルトランスフォーメーション)の目的
 DXの目的は、「デジタル技術を用いてビジネスモデルを変革し新たな付加価値を創造する」ことだと定義できます。その手段としてクラウドを導入するとインターネットによって様々な情報、モノ、人とつながることになります。
その結果、「自社のこれまでのノウハウがつながりのなかった人や場所と接続することになり、新たなビジネスチャンスが生まれます。」
このように言うのは簡単ですが、実際は紙文化やアナログな業務フローで日々の仕事は回っており、そこにいきなりクラウドを導入しても何から手をつけていいのかわからないのが中小企業の実態ではないでしょうか。
次回はDX推進の最後の障壁、『既存システムへの依存』について考えます。

中小企業に立ちはだかるDXの壁(投資編)

2025-02-14
中小企業に立ちはだかるDXの壁(投資編)
中小企業にとってIT投資のメリットは?
これまでのブログで、自動化とDXの目的は「労働生産性の向上と工数の削減」であり、企業の成長に不可欠であると繰り返し述べてきました。しかし、多くの中小企業ではDXの推進が遅れており、その要因として、①投資資金の制約、②ITリテラシーの不足、③既存システムへの依存の3つが挙げられます。今回はそのうち「投資資金の制約」について考えます。

DXには、クラウド環境の構築、IoT機器の導入、AIやデータ分析ツールの活用など、多岐にわたる技術投資が必要です。例えば中小製造業におけるクラウド導入を考えてみましょう。多くの企業では、既にパッケージ化された生産管理や受注システムをオンプレミス(自社サーバー)で運用しています。オンプレミスは、セキュリティ面の安心感や自由なカスタマイズ性が強みですが、サーバーの維持管理にはコストがかかります。トラブル時の復旧対応やバックアップにも相応のリソースが必要です。

一方で、クラウドサービスは、インターネット経由で外部のサーバーやシステムを利用する形態です。システムの保守・管理をクラウド運営企業に任せられるため、自社で専任の管理者を立てる必要がありません。しかし、単にオンプレミスのシステムをクラウドに移行するだけでは、投資のメリットが見えにくいのも事実です。特に、長年オンプレミスで運用してきた企業では、膨大なデータ移行に高額なコストがかかるため、経営者にとっては「多額の費用がかかるだけで、投資対効果が見えにくい」と感じられることが少なくありません。

さらに、この課題に追い打ちをかけるのが「ITリテラシーの不足」です。次回は、ITリテラシーの問題がDX推進にどのような影響を及ぼすのかを考えます。

中小企業のDX

2025-02-06
中小企業のDX

自動化とDXは相似形
今回のテーマであるDXは自動化と共通点が多く、手段は異なりますが目的は同じです。中小企業が企業として存続し発展していくためには、自動化とDXは避けて通ることのできない経営課題です。
自動化の目的は繰り返しになりますが、「労働生産性の向上と工数の削減」です。その手段の代表例がロボットです。DXは「デジタル技術を活用し、業務プロセスやビジネスモデルを変革する」のが目的で、その手段はクラウド、AI、データ活用、IoT、MES(製造実行システム)などになります。つまり、目的は同じ=「工数削減・業務効率化・生産性向上」です。わかりやすく単純化すると自動化≒ロボット、DX≒クラウドと言えるでしょう。

ロボットとクラウドの融合
これまでは、ロボット(自動化)とクラウド(DX)は別々に語られることが多かったのですが、現在はこの二つが融合するケースが増えてきました。代表的な事例がIoTで、様々なモノをインターネットでつなぐ(Internet of Things)ことを言います。製造・生産現場でIoT活用が広がっており、IoTによって稼働中のロボットやその周辺設備の状況をリアルタイムでモニタリングし、稼働状況やエラーをすぐに検出することができます。IoTによって、無駄なダウンタイムが削減され、生産性が向上します。加えて効率的な生産管理と予知保全により、運用コストを削減することが可能です。また、エネルギー使用量の最適化も図れるため、省エネにも繋がります。
例えば,関連会社の中部焼結販売で取り扱っているSMCエアマネジメントシステムは設備の負荷に応じて自動で低圧化し、不要なエア消費を削減するシステムです。遠隔監視、操作が可能で、IoTの活用例といえます。

中小企業に立ちはだかるDXの壁
 このようにDXに投資すれば「生産性の向上と工数の削減」が実現できることになります。しかしながら、中小企業の製造業における自動化、DXは大企業に比べて遅れている傾向があります。
主な課題として、①投資資金の制約②ITリテラシーの不足③既存システムへの依存が立ちはだかります。
次回はどうすればこれらの課題を解決できるのか考えます。

未来の投資とは?

2025-01-30
未来の投資とは?
自動化は投資ではなく経費節減? 
 今回のテーマである企業にとっての「未来の投資とは?」について考えます。
未来の投資の対極にあるものが、経費削減です。企業は景気が悪くなると真っ先に経費を削減しようとします。
すぐに思い浮かぶ経費削減は、賞与、出張、接待、福利厚生、研究開発、設備投資、新規採用などが挙げられます。
言い方を変えるとこの逆の行動が投資となります。つまり未来の投資とは、長期的観点に立ったお金の使い道と言えるでしょう。
 自動化を躊躇する要因として、特に協働ロボットの場合は経費削減の代替案となってしまうことがあります。
協働ロボットはぶつかっても安全にロボットが停止するセンサーやモータが使われており、人と共存できる反面、生産設備としてのパフォーマンスは産業用ロボットと比較して劣ります。
 企業が自動化に生産効率の向上と工数の削減を期待しているのは前回述べた通りです。
この観点だと協働ロボットによる自動化は、人による単純作業の置き換えにプラスアルファの付加価値がないと投資に結びつかないと言う事になります。
この課題をクリアするために必要なことは、ロボットにかかる初期投資はできるだけ低く抑え、専門的な知識がなくても既存のリソースで、設置、運用が持続することが求められます。

井上電子の技術で自動化を実現
 HPでご紹介しているロボットシステムは、井上電子の長年培った電子制御と安全の技術を組み合わせたシステムです。
ロボット本体はユニバーサルロボットを使用し、エリアセンサーは安全器を販売してきた井上電子の自社製品です。
ロボットハンドコンパクトコンプレッサー無線システムは関連会社の中部焼結販売のパートナーであるSMCの新製品です。
コンベアとロボットは井上電子で設計したPLCによって制御されています。
制御装置を設計している技術員であれば、ロボットシステムの回路設計はそこまでハードルは高くありません。
このように井上電子は自社の強みをロボットシステムに活かしていきたい考えており、自動化への投資の抑制要因を解決することが可能です。
次回は、自動化とならぶ中小企業の課題である、DXについて考えます
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